案五四三(1543/And-Go-Sea-Sun/アンゴーシサン/暗号資産)

一コマ漫画風にした時事ネタです(produced by 横井宏英)

『大学病院の奈落』驚愕の医療不手際の連鎖

群馬大学医学部付属病院の腹腔鏡手術による医療事故の一部始終を描いた『大学病院の奈落』(高梨ゆき子)を読むと、日本の医療の品質確保のあり方がいかに穴だらけであるかが分ります。同病院では2010年~2014年にかけて、同じ医師による腹腔鏡手術を受けた8人の患者が相次いで術後に死亡していたことが分ったほか、後に同医師の開腹手術でも10人以上の患者が術後に死亡していることが判明しました。手術記録を検証した外部医師が「相当下手」と評価するようなレベルの手術が歯止めなく行われた結果、手術を受けた患者はいずれも、縫合不全による出血等の重い術後合併症に苦しんだ末、手術後数日から100日の間に亡くなっています。又、短い間に相次ぐ死亡症例に対して当時から院内でも状況を疑問視する職員も多くいましたが、病院として具体的に原因分析や検証等がなされることは全くなく、前例が何ら活かされないまま同じ方式の手術が漫然と繰返されていたことも明らかになりました。

本によれば、その後同病院は特定機能病院の指定を取り消された(当たり前ですが)ほか、事故を受けて色々な再発防止策が打たれましたが、まだ抜本的な形とは程遠いと映ります。これだけの大問題にも拘らず、問題の医師は医師免許が停止されるような事はなく、現在も別の病院で医師業を継続しています。又、現在患者団体側で刑事告訴・民事請求に向けた動きがありますが、刑事での有罪はハードルが高いと考えられ、民事賠償の金額も不透明です。何より患者は命を失っており、その点に関して事後的な回復や補償が不可能です。

これらに対しては事後措置と情報公開の両面からの対策が不可欠と考えます。技術が相当程度劣っていたり患者本位の意識が甘い医師は、医師としての適格性を欠きますので免許停止や剥奪の対象範囲を広げる必要があるほか、悪質な場合の刑事処分も法定すべきです。又、病院毎の治療結果を全てオープンにするとともに、粉飾されないように患者や患者家族が検証できるプロセスが必要です。

 

大学病院の奈落

大学病院の奈落